美容家・鍼灸師・国際中医師 濱田文恵
娘へ。——はじめに
いつかあなたがスキンケアに興味を持ち始めたとき、きっとまず「何を塗ればいいの?」って思うよね。
でもね、ママが先に伝えたいのは、化粧品の選び方じゃないの。
自分の肌が、どんなふうにできているか。
それを知っているだけで、流行に振り回されなくなる。「なんでこれを塗るの?」「なんで乾燥するの?」の答えが、自分の中に持てるようになる。
肌のしくみを知っている女の子は、強いよ。一生、自分のキレイを自分で守っていけるから。
今日はちょっとだけ、肌の「中身」の話をするね。
肌の構造とは?——表皮・真皮・皮下組織の3層
肌って、外から見るとひとつのものに見えるよね。でも実は、3つの層が重なってできているの。
肌は「表皮」「真皮」「皮下組織」の3層構造になっていて、それぞれが異なる役割を持ちながら、互いに連携して肌を守っています。
表皮——外側を守る薄い盾
一番外側にあって、厚さはたった0.2mm。ラップ一枚くらいの薄さなんだよ。この薄い層が、外の刺激から身体を守ってくれてる。水分を保つのも、紫外線をブロックするのも、この表皮の仕事。
表皮はさらに「角層」「顆粒層」「有棘層」「基底層」の4つの層に分かれていて、一番外側の角層がバリア機能の最前線として肌を守っています。
真皮——ハリと弾力をつくる層
表皮の下にあって、厚さは約1.8mm。ここには肌のハリや弾力を保つコラーゲンやエラスチンがあるの。肌のふっくら感は、この真皮が元気かどうかで決まります。
皮下組織——栄養を届ける土台
一番深いところにあって、脂肪を蓄えたり、身体全体のクッションになったりしてる。血管もここにたくさん通っていて、肌に栄養を届ける土台のような存在です。
たった数ミリの中に、これだけの層が重なって、あなたの肌を守ってくれているんだよ。
きめ細かい肌とは?——「皮溝」と「皮丘」のバランスが決める
「あの人、肌のきめが細かいね」って聞いたことあるよね。でも「きめ」って何のこと?って思わない?
肌の「きめ」とは、肌表面にある「皮溝(ひこう)」と「皮丘(ひきゅう)」のバランスのこと。皮溝の幅が狭く、適度な深さに整っている肌が「きめ細かい肌」と呼ばれます。
高い化粧品を使っているからきれいなんじゃなくて、この溝と丘のバランスが整っているからキレイに見えるの。そしてこのバランスは、睡眠・食事・身体の巡り——つまり毎日の暮らし方で変わるんだよ。
ターンオーバーとは?——肌が約28日で生まれ変わるサイクル
肌って、ずっと同じ細胞でいるわけじゃないの。約28日かけて、少しずつ生まれ変わってるんだよ。
ターンオーバーとは、表皮の細胞が基底層で生まれてから角層に届き、最終的にはがれ落ちるまでの、肌の生まれ変わりのサイクルのこと。理想的な周期は約28日とされています。
一番深い基底層で新しい細胞が生まれて、約2週間かけて角層まで押し上げられ、さらに約2週間とどまって肌を守ったあと、役目を終えて自然にはがれ落ちていく。
ターンオーバーが整っていれば、古い角質がちゃんとはがれて新しい肌が表面に出てくるから、くすみにくいし、肌荒れもしにくい。
でも乱れるとどうなるかというと——
遅すぎると、古い角質がいつまでも残って、肌がごわごわしたり、くすんだりする。早すぎると、まだ未熟な細胞が表面に出てきてバリア機能が弱くなり、乾燥したり肌荒れしやすくなる。
早ければいいってもんじゃないの。ちょうどいいリズムで、穏やかに生まれ変わるのが一番。
ターンオーバーが乱れる主な原因は、加齢・紫外線ダメージ・睡眠不足・食事の偏り・身体の冷えなど。結局ね、暮らし方に戻ってくるんだよ。
バリア機能とは?——肌が持つ、自分を守る力
あなたの肌には、もともとすごい力が備わってるの。
肌のバリア機能とは、表皮の角層が持つ「水分保持」と「外部刺激からの防御」の働きのこと。
皮脂膜・NMF(天然保湿因子)・細胞間脂質の3つが連携して、肌を守っています。
表皮の一番外側には「皮脂膜」という薄いベールがあって、肌の水分が蒸発するのを防いでくれる。皮脂と汗が混ざってできた、天然のクリームみたいなもの。
その下には「NMF(天然保湿因子)」という、肌自身が作り出す保湿成分があって、水分をつかまえて離さないようにしてくれる。さらにその間を「細胞間脂質」が埋めていて、水分と油分がミルフィーユのように何層にも重なって(これをラメラ構造と言うの)バリアを形成しています。
つまりね、肌はもともと自分で潤う力を持っているの。
化粧品って、この肌本来の力を「助ける」もの。「代わりにやってあげる」ものじゃないんだよ。
だから、高いクリームを塗ることよりも、肌自身が持っているこの力を壊さないことのほうが、ずっと大事。洗いすぎない。触りすぎない。冷やさない。ちゃんと寝る。地味だけど、これが肌の力を守る一番の方法。
基底膜とは?——表皮と真皮をつなぐ見えない橋
もうひとつだけ、少し専門的だけど大事な話をするね。
基底膜とは、表皮と真皮の境目にある厚さ約0.1μmの薄い膜のこと。表皮と真皮を接着し、栄養や老廃物の受け渡しを行う「橋渡し役」を担っています。
若い肌の基底膜は、波打つようにしっかりした凹凸があって、表皮と真皮ががっちりかみ合っている。だから肌にハリがあって、弾力がある。
でも年齢を重ねると、この凹凸がだんだん平坦になっていく。かみ合いがゆるくなって、ハリが失われていくの。
だから若いうちから基底膜を元気に保つことが大事。じゃあどうすればいいかというと——紫外線を防ぐこと、肌をこすらないこと、栄養をちゃんと摂ること、しっかり眠ること。
特別なことじゃないよね。でもこの「特別じゃないこと」を毎日続けられるかどうかで、10年後、20年後の肌が変わるの。
よくある質問(Q&A)
Q. ターンオーバーを整えるには何をすればいいですか?
A. 十分な睡眠・バランスのよい食事・紫外線対策・身体を冷やさないことが基本です。ピーリングなどで無理に早めるよりも、身体の内側からリズムを整えることが大切です。ターンオーバーは促進するより「乱さない生活習慣」を守ることが先決です。
Q. 肌のバリア機能が壊れる原因は何ですか?
A. 洗顔のしすぎ・肌のこすりすぎ・乾燥・紫外線・睡眠不足などが主な原因です。化粧品で補うことも大切ですが、まずバリア機能を「壊さない」生活習慣を心がけることが、根本的なスキンケアになります。
Q. 基底膜のケアは何歳から始めるべきですか?
A. 早いに越したことはありません。紫外線対策と肌をこすらない習慣は、年齢に関係なく今日から始められる基底膜ケアです。20代から意識するだけで、40代・50代の肌の変化が大きく変わります。
Q. 化粧品を変えても肌が改善しないのはなぜですか?
A. 肌本来のバリア機能やターンオーバーが乱れている状態では、どんな化粧品を使っても効果が出にくくなります。まず睡眠・食事・紫外線対策などで肌の土台を整えることが、スキンケアの効果を最大化する近道です。
娘へ。——おわりに
ママが今日伝えたかったのは、化粧品の選び方じゃない。
あなたの肌がどんなふうにできていて、どんな力を持っていて、何をすれば守れるのか。
それを知っている女の子は、流行に振り回されない。「この美容液がバズってるから」じゃなくて、「自分の肌に今これが必要だから」って選べるようになる。
肌のしくみを知ることは、自分の身体を信じること。高い化粧品を買えるようになることよりも、自分の肌を自分で守れるようになることのほうが、ずっと価値がある。
スキンケアの一番の土台は、知ること。そしてその知識で、毎日の暮らしを整えること。
あなたには、そういうキレイの守り方を知ってほしい。
ママより
執筆者プロフィール
濱田文恵(はまだふみえ) 美容家・鍼灸師・国際中医師・国際中医薬膳師・毛髪診断士・医薬品登録販売者
中国・江蘇省蘇州生まれ、4歳から日本で育つ。東洋医学と美容の研究を10年以上続け、3人の子を育てるママでもある。鍼灸師国家資格取得、上海中医薬大学日本校中医専門課程修了。株式会社LINOME代表取締役、一般社団法人日本セルフ美容協会代表理事。漢方コスメブランド「朱華(shuka)」プロデューサー。「老けの根っこから整える」東洋×西洋の美養法を提唱。
本コラムは、鍼灸師・国際中医師の資格をもつ濱田文恵が、皮膚科学および東洋医学の知見にもとづき執筆しています。医療行為を目的としたものではありません。症状が強い場合や持病・服薬がある場合は、専門家へご相談ください。


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