美容家・鍼灸師・国際中医師・毛髪診断士 濱田文恵
はじめに——春は、髪の「チャンスの季節」
桜が咲くと気分が上がるように、実は髪も春に一番元気になります。
東洋医学では、春は「生発(せいはつ)」の季節——新しい命が芽吹き、体の機能が活性化する時期とされています。これは髪も同じで、一年の中でもっとも髪が成長しやすいのが春なのです。
せっかくなら、このタイミングで正しいヘアケア習慣を整えておきたい。今回は、外側からのケア・内側からの栄養・日常の小さな習慣の3つに分けて、今日からすぐ実践できる養髪のコツをまとめました。
まずはセルフチェック:あなたの毛包、まだ元気?
養髪ケアを始める前に、今の髪の状態を確認してみましょう。
やり方はシンプルです。指を開いて頭皮に差し込み、髪の根元を軽く挟んで、毛先までゆっくり引っ張ってみてください。
抜けたのが2本以下 → 毛包の多くはまだ成長期にあります。このまま習慣を維持しましょう。
5本以上抜けた → 休止期に入っている毛包の割合が高めです。
早めのケアを始めましょう。
よくある抜け毛のタイプ
夜更かし・ストレス型:
急に抜け毛が増え、頭皮がつっぱる感覚がある。長期間の精神的緊張が主な原因。
ダイエット・栄養不足型:
髪が細く柔らかくなり、切れやすい。爪に縦線が入ったり、疲れやすさを感じることも。
産後の抜け毛:
びまん性(全体的)の脱毛で、髪質が黄色くパサつきやすい。
脂漏型:
頭皮がベタつきやすく、髪の根元がぺたんこになる。頭頂部が薄くなりやすい。
更年期の薄毛:
全体的に毛量がゆっくりと減少していく。
長期的な栄養不足・夜更かし・ストレスの蓄積は、毛包を少しずつ弱らせ、やがてその機能を失わせてしまいます。髪が抜けやすくなるのは、その積み重ねの結果です。
外側のケア——まず「抜け毛」を食い止める
洗い方
水温は40℃前後を目安に。熱すぎるお湯は頭皮を刺激して皮脂の過剰分泌につながります。シャンプーは手またはネットでしっかり泡立ててから頭皮にのせましょう。洗うのは頭皮だけ。毛先は泡が通るだけで十分です。洗い終わったらタオルで優しく押さえるように水気を取り、ゴシゴシこすらないようにしてください。
乾かし方
洗髪後5分以内にドライヤーで乾かすのが基本です。濡れたまま長時間放置すると、キューティクルが開いたまま傷みやすくなります。タオルキャップを使う場合は10分以内に外すこと。まず頭皮から乾かし、その後は髪の流れに沿って毛先へ向けて風を当てます。温風でほぼ乾いたら、最後に冷風に切り替えましょう。8割乾きくらいでOKです。
ポイント:髪の流れに逆らって風を当てるとキューティクルが開いてしまいます。必ず上から下へ向かって吹きましょう。
ブラッシング
幅広の櫛・クッションブラシ・木製の櫛がおすすめです(静電気防止にもなります)。毛先から先にほぐして、徐々に根元へ。絡まりを無理に引っ張ると切れ毛が増えてしまいます。朝晩、頭皮を軽くブラッシングすると血行促進にも効果的です。
頭頂部の「百会(ひゃくえ)」ツボ(両耳の上を結んだ頂点)や、耳の上あたりにある「角孫(かくそん)」ツボを時々マッサージするのもおすすめです。
ダメージを減らす
パーマやカラーは最低3ヶ月以上間隔を空けるのが理想です。きつい高めポニーテールやお団子ヘアは毛根への負担が大きいので控えめに。寝るときは髪をほどいて、頭の上に広げるように散らして寝ると、摩擦ダメージを減らせます。
内側のケア——髪の量を本当に決めるカギ
中国の古典『本草綱目』には「髪は血の余り」という言葉があります。髪は体内の気血が十分にあってこそ、健やかに育つもの。土壌が豊かでなければ木が茂らないのと同じです。
髪の約90%はタンパク質でできています。だからこそ、食事からの栄養補給が何より大切です。
毎日卵を1〜2個、または十分な量の魚・肉・大豆製品をとること。
週に2回はレバーや赤身肉(豚レバー・鶏レバー・牛肉・羊肉など)で鉄分を補給しましょう。
ビタミンCと一緒に摂ると吸収率がアップします。
毎日スプーン1杯の良質な油脂を意識して。亜麻仁油・くるみ油・魚油・オリーブオイルなど、コールドプレス(低温圧搾)のものがおすすめです。
毎日1杯の黒ごまペーストを続けてみてください。東洋医学では「腎は髪を司る」とされており、黒い食材は腎を養うと考えられています。続けることに意味があります。
滋養スープを積極的に取り入れましょう。薬膳スープ・なつめや枸杞のお茶・蓮の葉茶などがおすすめです。
日常の小さな習慣——見落としがちなポイント
頭皮も紫外線対策を忘れずに。長時間の直射日光は頭皮にもダメージを与えます。帽子や日傘を活用しましょう。
タオルキャップは吸水後10分以内に外すこと。そのまま放置すると蒸れて頭皮環境が悪化します。タオルキャップをしたままメイクをする習慣も見直してみてください。
分け目は定期的に変えましょう。同じ分け目のままだと、その部分の頭皮が紫外線にさらされ続け、薄くなりやすくなります。
空腹時のコーヒーには注意を。高カフェイン+睡眠不足はコルチゾール(ストレスホルモン)を上昇させ、毛包が休止期に入るのを加速させてしまいます。
極端な低炭水化物ダイエットは避けましょう。毛包は体にとって「必須ではない器官」。栄養が不足すると、体は重要な臓器を優先し、髪への栄養供給を後回しにしてしまいます。
よくある質問(Q&A)
Q. 春に抜け毛が増えるのはなぜですか?
A. 春は体が冬のモードから切り替わる時期で、毛周期のリセットが起きやすく、一時的に抜け毛が増えることがあります。これは自然な生理現象ですが、同時に新しい髪が育ちやすいタイミングでもあります。栄養と頭皮環境を整えることで、抜けた後の回復が早まります。
Q. 黒ごまは毎日食べないと意味がないですか?
A. 効果を実感するには継続が大切です。東洋医学では腎を養う食材は「少量でも毎日続ける」ことが基本とされています。ペースト状のものをお湯に溶かして飲むだけでも続けやすくなります。
Q. ドライヤーは髪に悪いと聞きましたが、使わない方がいいですか?
A. 逆です。濡れたまま放置する方が、キューティクルへのダメージが大きくなります。適切な距離(20cm以上)と温度で、髪の流れに沿って乾かすことが大切です。
Q. 産後の抜け毛はどうケアすればいいですか?
A. 産後の抜け毛はホルモンバランスの変化によるもので、多くの場合は一時的です。ただし、栄養不足が重なると回復が遅くなります。タンパク質・鉄分・良質な油脂を意識して摂りながら、頭皮への負担を減らす洗い方・乾かし方を実践してみてください。
まとめ——春の3ヶ月が、秋の髪をつくる
美しい髪は一日にしてならず。でも、毎日のちょっとした意識の積み重ねが、数ヶ月後の髪に確実に表れてきます。
春に整えた習慣は、秋・冬の髪の土台になります。今日できることを1つだけ選んで、まず始めてみてください。
執筆者プロフィール
濱田文恵(はまだふみえ) 美容家・鍼灸師・国際中医師・国際中医薬膳師・毛髪診断士・医薬品登録販売者
中国・江蘇省蘇州生まれ、4歳から日本で育つ。東洋医学と美容の研究を10年以上続け、3人の子を育てるママでもある。鍼灸師国家資格取得、上海中医薬大学日本校中医専門課程修了。毛髪診断士として髪と頭皮の専門的なケアも提唱。株式会社LINOME代表取締役、一般社団法人日本セルフ美容協会代表理事。漢方コスメブランド「朱華(shuka)」プロデューサー。「老けの根っこから整える」東洋×西洋の美養法を提唱。
本コラムは、鍼灸師・国際中医師・毛髪診断士の資格をもつ濱田文恵が、東洋医学および毛髪科学の知見にもとづき執筆しています。医療行為を目的としたものではありません。症状が強い場合や持病・服薬がある場合は、専門家へご相談ください。


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