なぜ35歳を過ぎると、生き方を見直したくなるのか。中医学が教える「黄金の10年」の4つの土台

なぜ35歳を過ぎると、生き方を見直したくなるのか?考えてみた。

美容家・鍼灸師・国際中医師 濱田文恵

目次

はじめに——35〜45歳は「老いていく10年」ではなく、「自分自身に還る黄金の10年」

「人生で最も曼妙な風景は、内面の落ち着きと余裕である」——作家・楊絳氏のこの言葉に、最近とても深く頷くようになりました。

35歳という年齢を迎えた頃から、私のもとに通ってくださる女性たちのお話を伺うなかで、ある共通する変化に気づきました。それは、「他人の物差しで生きてきた違和感」が、身体のサインとして現れ始めるということ。

中医学では、女性の身体は7年ごとに節目を迎えると考えられています(黄帝内経・七損八益)。

35歳前後は「陽明脈衰(ようめいみゃくすい)」と呼ばれ、顔のハリや消化機能が変化し始める時期。42歳では「三陽脈衰」となり、白髪やほうれい線が目立ち始める頃です。

つまり35〜45歳とは、身体が「これまでの生き方の答え合わせ」を始める時期なのです。

そしてこの10年は、決して「老いていく10年」ではありません。むしろ本当の意味で「自分自身に還っていく黄金の10年」だと、私は確信しています。

この記事では、人生の上り坂を登っている同世代の女性に向けて、中医学・薬膳・鍼灸の視点を交えながら、「自分自身に還るための4つの土台」をお届けします。

なぜ35歳を過ぎると、生き方を見直したくなるのか

35歳までの私たちは、「他人の目に映る模範解答」のように生きてきた人が多いのではないでしょうか。

学ぶべき時に学び、結婚すべき時に結婚し、子どもを産むべき時に産む。

私自身、ライターとして独立し出版をした20代、3人の子どもを産みながら鍼灸師・国際中医師の資格を取った30代前半——そのときどきの「役割」をこなすことに必死でした。

けれど35歳を過ぎたある日、ふと気づくのです。

「私は誰だろう?」と。

老いていく親の後ろ姿。子どもの成長と引き換えに支払った時間。鏡に映る、少しだけ知らない顔。

中医学では、これを「肝鬱気滞(かんうつきたい)」の状態として捉えます。自分の本来の感情や欲求を抑えてきた結果、気の巡りが滞り、心と身体に違和感が表れる状態です。

でも、この違和感こそが「自分自身に還る扉」なのです。

女性の身体と7年周期——中医学の視点

中医学では女性の生命サイクルを7年ごとに区切って捉えます。黄帝内経に記されたこの考え方は、2000年以上にわたって受け継がれてきた知恵です。

7歳:腎気が充ち始め、髪が豊かになり永久歯が生える

14歳:天癸(月経を起こすホルモン的なもの)が至り、月経が始まる

21歳:腎気が充実し、親知らずが生え体が完成する

28歳:筋骨が最も丈夫になり、髪も最も豊かな最盛期

35歳:陽明脈衰。顔にやつれが出始め、髪が抜け始める

42歳:三陽脈衰。顔のすべてが衰え、白髪が目立ち始める 49歳:天癸が尽き、月経が止まり、妊娠できなくなる

この視点からわかることがあります。

35歳は「衰えの始まり」ではなく「変化の節目」であり、ここから養生を意識するかどうかが、42歳・49歳の状態を大きく分けます。

土台①「健康は、唯一の人生の土台」——35歳から特に大切にしたい3つの臓

「身体は一人ひとりの神殿である」

35歳を過ぎて最も実感するのは、健康は「あれば当たり前」ではなく「育てるもの」だということ。

中医学では、女性の美容と健康を支える3つの臓として「肝・脾・腎」を特に重視します。

肝:気血の巡り・感情の発散を担う。ストレスの影響を最も受けやすい臓腑。シミ・肌のくすみ・PMS・不眠に関わりやすい。

脾:消化吸収・栄養をつくる工場。食事の乱れ・考えすぎで弱りやすい。むくみ・疲れやすさ・肌のたるみに関わりやすい。

腎:生命力の貯金箱。加齢・過労・睡眠不足で消耗しやすい。白髪・抜け毛・骨の弱化・慢性疲労・老化全般に関わりやすい。

今日から始められる3つのケア

朝起きたら深呼吸とストレッチ(肝の気を巡らせる)、温かいものを朝食に(脾を養う・冷たい飲み物や生野菜は控える)、23時までに寝る(腎を補う・肝の解毒時間は23〜1時)。

特別なサプリより「規則正しい生活」こそが最高の中医美容です。健康は「1」であり、富も名声もキャリアもその後ろに続く「0」にすぎません。1がゼロになれば、何も残らないのです。

土台②「お金は、創造するためのものへ」——経済的自立が大人女性の最強の後ろ盾

35〜45歳の10年で、私が女性たちに最もお伝えしたいのは——経済的自立は、大人女性の最強の「後ろ盾」になるということです。

勤務時間の8時間は生活のために。それ以外の8時間は「自分自身を発展させる時間」に使ってほしい。

組織を離れても立てる力を育てる選択肢として、収益化できる副業(ライター業・SNS発信・講座など)、積み上がる技術を磨くこと(私の場合は鍼灸・中医学)、揺るぎない知識資産を持つこと(投資・運用の基礎知識)が挙げられます。

たとえゼロからのSNS発信であっても、それは「自分自身という頼れる山」を築くこと。経済的自立は、夫や会社や時代から自分を守る「お守り」です。

土台③「学び直しは、大人女性の逆転劇の切り札」——「神(しん)」を養う学び

「若いうちに真剣に生きる余裕がなかった。気づいた時には、真剣に老いてゆくことしか選べない」——三毛

大人女性の転機とは、ゼロからやり直すことではありません。過去のすべての歩みを、次へ進む階段に変えることです。

学び直しを始めるときの3つのヒント:「今すぐ役に立つか」で選ばない(心がときめくものを選ぶ)、完璧主義を手放す(30%できれば発信できる)、「学ぶ私」を発信する(プロセスそのものが価値になる時代)。

中医学でいえば、これは「神(しん)」を養うこと。神とは私たちの精神性・生命力・輝きの源。神が満ちている女性は、何歳になっても美しく、惹きつける力を持っています。

土台④「人間関係は、引き算を学ぶ修行」——肝を守る関係の整え方

「一日は借り物ではない。生活は自分自身のものだ」——莫言

35〜45歳になったら、人間関係は「足し算」より「引き算」の時期に入ります。

引き算すべき関係:あなたを消耗させる人、他人を変えようとする執着、義務感だけで続けている付き合い。

大切に育てる関係:親には説得より傾聴を、子どもには教えるより寄り添いを、パートナーは裁判官ではなく戦友として。

中医学では人間関係のストレスは「肝」を傷つける最大の要因とされます。肝が傷つくとシミ・肌のくすみ・生理トラブル・不眠など、美容と健康のあらゆる不調につながります。

肝の気の巡りを整えるツボ「太衝(たいしょう)」:足の甲、親指と人差し指の骨が交わる手前のくぼみ。お風呂上がりに左右30秒ずつ、痛気持ちいい強さで押してみてください。感情を落ち着かせ、気の滞りをほどく万能ツボです。

よくある質問(Q&A)

Q. 「陽明脈衰」とは何ですか?35歳に起きる体の変化を教えてください。

A. 陽明脈衰(ようめいみゃくすい)とは、黄帝内経に記された女性の7年周期の中で、35歳頃に訪れる変化を指します。「陽明」は顔や消化器系に関係する経絡で、この脈が衰え始めることで顔のハリが落ち始め、消化機能が変化し、髪が抜けやすくなると考えられています。これは「老化の始まり」ではなく、自分の体と向き合う養生のタイミングを知らせるサインです。

Q. 35歳から中医学的な養生を始めるのは遅すぎますか?

A. まったく遅くありません。中医学では「腎気」は後天的に養えるものとされています。今日始めた一杯の白湯、今夜の早寝が3ヶ月後の肌と心を変えます。むしろ35歳は「体が変化のサインを出し始める節目」であり、ここから意識するかどうかが42歳・49歳の状態を大きく左右します。

Q. 「肝鬱気滞」とはどういう状態ですか?

A. 肝鬱気滞(かんうつきたい)とは、感情の抑圧やストレスが続いたことで肝の疏泄(気を巡らせる働き)が滞り、気血の流れが詰まった状態です。ため息が増える・胸のつかえ・イライラ・PMSの悪化・肌のくすみなどが主なサインです。35歳以降に「なんとなく違和感がある」「自分らしくない気がする」と感じる方は、肝鬱気滞が関係していることがあります。

Q. 35〜45歳の女性が美容と健康の両方を整えるために、最初にやることは何ですか?

A. まず睡眠を整えることです。23時までに寝ることで腎を補い、肝の解毒時間を確保できます。次に、朝に温かいものを食べること(脾を養う)。この2つだけで、肌のコンディション・疲れやすさ・気分の安定が変わってくる方が多くいます。特別なことを足す前に、まずこの2つを3週間続けてみてください。

まとめ——あなたは「老いる」のではなく、「自分自身に成る」

35〜45歳のこの10年は、青春の終わりではなく人生の「上昇気流」です。「決められた自分」から「自分で決める自分」へ。それは誰の許可もいらない、あなただけの逆転劇。

中医学に「根深ければ枝葉繁る(こんふかければしようしげる)」という言葉があります。根(土台)を整える女性こそ、年齢を重ねるほどに咲き続ける。

35歳の今、あなたが向き合うべきは、シミでも、シワでも、白髪でもなく——「私はこれからどう生きたいか?」という、根の問いです。

執筆者プロフィール

濱田文恵(はまだふみえ) 美容家・鍼灸師・国際中医師・国際中医薬膳師・毛髪診断士・医薬品登録販売者

中国・江蘇省蘇州生まれ、4歳から日本で育つ。20代でライターとして独立・書籍出版、30代で3人の子を産みながら鍼灸専門学校を修了し国家資格を取得、上海中医薬大学日本校中医専門課程修了。株式会社LINOME代表取締役、一般社団法人日本セルフ美容協会代表理事。漢方コスメブランド「朱華(shuka)」プロデューサー。「老けの根っこから整える」東洋×西洋の美養法・延美長寿を提唱。

本コラムは、鍼灸師・国際中医師の資格をもつ濱田文恵が、東洋医学の考え方にもとづき執筆しています。医療行為を目的としたものではありません。体調に関するご相談は専門家へお問い合わせください。

この記事を書いた人

鍼灸師・国際中医師・毛髪診断士。東洋医学をベースにした美容と養生を発信しています。

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