思い悩みすぎが、老けを加速する。「脾の養生」で肌も心も10歳若返る方法

美容家・鍼灸師・国際中医師 濱田文恵

目次

はじめに——「考えすぎ」が肌に出る、という話

新しい環境に飛び込んだとき、「うまくやれるかな」「失敗したらどうしよう」と、夜にぐるぐる考えてしまうことはありませんか。

実はその”思い悩む”という感情、肌に直接影響しています。

中医学では、思い悩みすぎは「脾(ひ)」を傷つけると考えます。そして脾が弱ると——老けやすくなる。
スキンケアをがんばっているのに、なんか老けて見える。

そんな方は、内側の脾が疲れているサインかもしれません。
今日は、肌のエイジングケアと深く関わる「脾の養生」についてお伝えします。

東洋医学の「脾」とは?——体の配送センター

西洋医学の脾臓とは異なる概念。

東洋医学でいう「脾」は、西洋医学の脾臓とは別の概念です。

ざっくり言うと、食べたものを消化吸収して、全身に栄養を届ける臓腑。気・血・水のもとになる栄養素をつくり、心や肺へ送り届ける「体の配送センター」のようなイメージです。
呼吸や免疫にも関わっているため、脾が弱ると体全体の働きがじわじわと落ちていきます。

古典が証明する「脾と肌」の深い関係
中国最古の医学書『黄帝内経(こうていだいけい)』には、こんな言葉があります。

「七十歳、脾気虚、皮膚枯。」
(七十歳になると脾の気が虚し、皮膚は枯れ艶を失う)

脾が弱ると皮膚は枯れ、くすみ、ハリを失う——つまり、脾を養生することがそのまま肌のエイジングケアになるという考え方です。

脾が弱ると出るサイン——肌以外にも現れる

脾は消化吸収だけでなく、血をつくって全身に巡らせる働きも担っています。だから脾が弱ると、肌のトラブルだけにとどまりません。

脾が弱ったときに出やすいサイン

• 脳への血流が滞り、集中力が落ちる
• 体全体が疲れやすくなる
• 脾は「筋肉」と「口」を司るため、筋力が落ちたり口周りが乾燥しやすくなる
• 体内の水液代謝が滞り、むくみやすい体質になる
• 肌にツヤがなくなり、たるみが出やすくなる

「太っていないのに体が重い」「最近、口周りがいつも乾いている気がする」——そんな方は、脾が疲れているかもしれません。

脾が弱り始めているサイン——セルフチェック

以下のうち、3つ以上当てはまる場合は脾のケアを意識してみてください。

  • 食事の時間がバラバラになりがち
  • 冷たい飲み物・甘いものをよく摂る
  • 脂っこいものが好き
  • 頭を使いすぎていると感じる
  • いつも何かしら思い悩んでいる
  • 顔が黄色っぽい
  • 唇が乾燥してカサカサする
  • 顔や体のむくみが気になる
  • 太っていないのに肌のたるみを感じる
  • 少し動いただけで疲れてしまう

脾を養生する4つの方法

① 食事——温かいものを、決まった時間に

東洋医学では、脾が最も活発に働く時間は朝9〜11時、そのパートナーである胃は朝7〜9時とされています。

この時間帯に脾胃を温める食材を摂ることが、最も効果的な養生になります。

脾を養う食材
魚・豚肉・蒸し料理・ほうれん草・アボカド・りんご・枸杞の実・あわ・きび・大豆・長芋など

そして、できるだけ朝昼晩、決まった時間に食べること。冷たいもの・辛いもの・脂っこいものは控えめに。

「何を食べるか」より「いつ、どう食べるか」が、脾には大切だったりします。

② メンタルケア——考えすぎない仕組みをつくる

中国の言葉に、こんな表現があります。

【凡事别太上心】
(多くのことを、心に留め過ぎない)

悩みすぎ・考えすぎが続くと気が停滞して「肝鬱(かんうつ)」になります。

そして肝鬱は、脾にまで負担をかけてしまいます。「考えすぎる癖がある」という方ほど、脾のケアは切り離せません。
完璧に悩まないようにするのは難しくても、意識的にリフレッシュする時間をつくるだけで違います。お気に入りの音楽、散歩、温かい飲み物。気持ちのリセット方法をいくつか持っておきましょう。

③ 適度な運動——「微汗」くらいがちょうどいい

【筋松一吋,延壽一年】
(少しのストレッチが寿命を一年伸ばす)

脾は筋肉を司っているため、脾気虚の方はたるみやむくみが出やすくなります。だからこそ、筋肉と骨の柔軟さを保つことが大切。
ゆるいヨガ・ストレッチ・散歩・ピラティスなど、ほんのり温まる程度が脾にはやさしいです。汗びっしょりになるほど激しく動く必要はありません。

④ ツボ押し——お腹を温めるだけでも◎

脾養生に役立つツボを4つご紹介します。

中脘(ちゅうかん):消化をサポートするツボ。みぞおちとおへその中間あたり。
気海(きかい):脾気虚に気を補うツボ。おへその指2本分下。
関元(かんげん):同じく気を補うツボ。おへその指4本分下。
足三里(あしさんり):脾胃全体の働きを整える万能ツボ。ひざの外側から指4本分下。

中脘・気海・関元はお臍の周辺に集まっています。ツボを正確に押せなくても、腹巻きやホッカイロでお腹を温めるだけでも十分な養生になります。

よくある質問(Q&A)

Q. 脾養生と肌のたるみは本当に関係があるのですか?
A. 東洋医学では「脾は肌肉(筋肉と皮膚)を主る」と考えます。脾の気が弱まると、栄養が肌や筋肉に届きにくくなり、ハリやトーンが失われやすくなります。スキンケアと並行して脾を整えることが、たるみケアの根本アプローチになります。
Q. 思い悩みすぎるとなぜ肌に出るのですか?
A. 中医学では「思いすぎると脾を傷つける」と明確に定義されています。過度な思慮・心配は気の流れを停滞させ(肝鬱)、その影響が脾に及びます。脾が弱まると栄養の生成・運搬力が落ち、肌のくすみ・乾燥・たるみとして現れやすくなります。
Q. 脾養生はいつから始めるといいですか?
A. 何歳からでも始められます。ただ、20〜40代は仕事・育児・ストレスで脾が最も消耗しやすい時期。この時期から食事の時間を整え、考えすぎをリセットする習慣をつくっておくと、40〜50代の肌の変化がゆるやかになります。
Q. 脾を養う食事で、特に続けやすいものは何ですか?
A. 長芋・大豆・りんごは日常的に取り入れやすくおすすめです。長芋は脾胃を補う代表的な食材で、生でも加熱でも食べられます。また、食材の種類より「決まった時間に温かいものを食べる」習慣そのものが、脾への最大のギフトになります。

まとめ——特別なケアじゃなくていい

東洋医学では、脾は「後天の本(こうてんのもと)」と呼ばれています。私たちが健やかに生きていくための、根本的な場所。
脾が健やかな人は、それだけで老けにくい体と肌を保てると言われています。
今日からできることは、たった3つ。

• 温かいものを、決まった時間に食べる
• 考えすぎた日は、リセットする時間をつくる
• 少しだけ体を動かす


全部を完璧にしなくていい。今日のひとつだけでいい。その積み重ねが、未来の肌をつくっていきます。

執筆者プロフィール

濱田文恵(はまだふみえ)
美容家・鍼灸師・国際中医師・国際中医薬膳師・毛髪診断士・医薬品登録販売者
中国・江蘇省蘇州生まれ、4歳から日本で育つ。東洋医学と美容の研究を10年以上続け、3人の子を育てるママでもある。鍼灸師国家資格取得、上海中医薬大学日本校中医専門課程修了。株式会社LINOME代表取締役、一般社団法人日本セルフ美容協会代表理事。漢方コスメブランド「朱華(shuka)」プロデューサー。「老けの根っこから整える」東洋×西洋の美養法を提唱

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本コラムは、鍼灸師・国際中医師の資格をもつ濱田文恵が、東洋医学の考え方にもとづき執筆しています。医療行為を目的としたものではありません。体調に関するご相談は、医療機関へお問い合わせください

この記事を書いた人

鍼灸師・国際中医師・毛髪診断士。東洋医学をベースにした美容と養生を発信しています。

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