ある一定の年齢になると、若い頃には感じなかったカラダの変化を感じるように……。例えば、たった一日、夜更かしをしたり、睡眠不足になったりするだけで、肌がカサカサし、顔全体がたるんだような状態に。もちろんは見た目だけでなく、精神的にも集中力がもたず、次の日にきちんと休んでもなかなか疲れが取れない。疲れを取るために何日もかかってしまうなんていう精神面や身体面での変化を感じることもあるでしょう。
実はこの変化はあなたの体からのサイン。とくに五臓の中の「脾(胃)」に負担が掛かっている表れですよ。中医学の先生たちの中には、”老化は「脾(胃)」から始まる”と考える先生もいます。つまり早めのうちに養生することが女性にとってのエイジングケアに繋がります。今日は「脾(胃)」のお話です。
目次
【中医美容入門】脾の働きとは
中医学でいう「脾(胃)」は、解剖生理学でいう脾臓や胃の働きとは少し異なります。解剖生理学で考える脾臓の働きは、古くなった赤血球をろ過したり、免疫の役目を果たします。そして、胃は食べたものを消化する役割です。一方で、中医学で考える「脾(胃)」は、栄養物の消化吸収のほかに、体内のほかの器官に栄養物(水穀の精微)を運びます。そのため、脾胃が不調になると、体内の運び屋さんがいなくなるので、必要な栄養が体内を巡らずエネルギーとなる「気」が不足し、気虚になってしまうのです。気虚になれば、体内の五臓六腑が活動できず、さまざまな不調に繋がっていきます。
脾が不調になると起きる健康美容トラブル
肌が枯れる
「脾偽後天之本」(脾は後天の本)
「脾為氣血生化之源」(脾は気血を生み出す源)
中医学の言葉に、「脾偽後天之本」(脾は後天の本)、「脾為氣血生化之源」(脾は気血を生み出す源)という二つの言葉があります。どういう意味かというと、私たちが胎児のころは、へその緒を伝って母親から栄養をもらっていました。でも、この世に生まれた後は、自分の「脾(胃)」の消化吸収の働きを頼って、カラダ(内臓)に栄養を摂取し、生命活動を行うことができます。
中国最古の医学書である黄帝内経の霊枢天年第54では「70歳、脾気虚・皮膚枯」という一節があります。つまり、脾の気が不足すると、肌の色は黄くすみ、色艶はなくなるということを古代の人々は言っているのです。今からずっとずっと昔より「脾(胃)」を健やかにすることは、エイジングケアにおいては必要不可欠なことだと考えられていたわけです。
疲れやすい
「脾(胃)」が弱ると血が足りなくなるので、大脳への血の供給がうまくできず、眠気を招きます。そのため、寝ているはずなのに「なんだか年中眠い。」という方は要注意。そのままにしておくと、日に日に反応が鈍くなったり、慢性的な疲労感に悩まされてしまいますよ。
筋力低下、ファイスラインのむくみ
中医学では「脾(胃)」は、筋肉と関係しているとかんがえています。食べたものから栄養をうまく吸収できないので、筋力が低下します。この状態を「脾胃虚弱」と表すのですが、 この「脾胃虚弱」は細身の方にも、ぽっちゃりしている方にも同様にいます。細身の方の場合には、脾の働きが低下しているために、下痢をしやすく、食べても太れない傾向があります。反対にぽっちゃりしている方の場合には、うまく消化吸収されず脂肪となってしまう傾向があります。フェイスラインがむくみやすいという方は、「脾(胃)」の働き低下を疑ってみてもいいかもしれませんね。
体型が崩れやすくなる
体内に痰や湿が溜まりやすい方の多くが「脾虚」にあたります。「脾(胃)」の働きが低下すると、栄養の供給だけでなく水分代謝も悪くなり、カラダはむくみやすく、体感も重くなっていきます。結果的に動くのが辛くなり、そこにさらに甘いものや暴飲暴食が加われば、痰やはどんどん溜まるという悪循環になってしまいます。最終的には食欲が減退し、お腹のハリや下痢を起こしやすくなってしまうというわけです。
健やかな美しさを手に入れたいなら!
私たちは、両親からもらったパワー(先天の本)を消費しながら、「脾(胃)」の働きによって食べ物からパワー(後天の本)をもらっています。つまり、いつまでも引き締まった体、色艶の良い肌、爪や髪の先まで若々しく綺麗でいたいなら、そのための材料と細胞を作るためのガソリンが必要ですよね。どんなに高いサプリや化粧品を使っても、体内で栄養物を運搬してくれる「脾(胃)」が元気でなければいけません。日頃から胃もたれしやすい方や食欲不振しやすい方は、食べ物を制限するダイエットよりも先に「脾(胃)」の働きを整え、いつまでも続く健やかな美しさを手に入れましょう。