エイジング

《中医美容発》腎の働き低下による老け問題。

古代宮廷では、中医美容に基づいてさまざまな食養生や美容法が取り入れられていました。もうまもなく梅雨が明けて、夏がやってきます。夏はシミを防ぐための紫外線対策が盛んになりますが、もっと重要なのは、エイジングケア。夏のうちにきちんと対策をしないと、紫外線による影響でシワを招いてしまいます。ただし容赦無く降り注ぐ紫外線は、普通に生活している限り浴びてしまう場面も少なくありません。つまり化粧品によるケアに合わせて老けにくいカラダや肌作りが老化の速さを遅まらせることができるのです。今日は、中医美容の立場から老けと関係する「腎」についてのお話です。

目次

老化と無縁の美しさは五臓の「腎」にあり

西洋では老化の原因のひとつは女性ホルモンの分泌低下と考えています。実は同じように中医美容でも、「腎」に先天の精気(生きる源から女性ホルモンなどの生殖に関わるホルモンまで)が蓄えられ、両親から受け継いだこの精気をいかに長く保つかが、エイジングケアにつながるとしています。つまり腎の陰陽バランスを整え、先天の精気を無駄にしないよう養生していけば若々しくいられるというイメージですね。

(そのほか中医学では、体内の「腎」は西洋的な腎臓の働きだけでなく、生殖機能や内分泌系、泌尿器系、骨髄の働きまで担当しています。)

では、腎の働きが低下するとどんな美容トラブルが起きるかご紹介しますね。

《腎の働き低下・腎虚》たるみ毛穴の発生

肌というのは「体内を映す鏡」なわけですが、中医美容では肝・脾・腎の経絡が女性の肌状態に関係するとしています。平均的に言えば、20代は大人ニキビ、30代はシミ、40代はシワ・たるみ問題に悩むことが多いはず。しかし最近は20代でも毛穴の開きが気になりはじめ、頬周りを中心にやや縦長に伸びたたるみ毛穴が発生しています。中医美容では、年代問わず、肌にたるみを感じるようになったら、腎の働きが低下してきているサイン。

腎精不足》体型が崩れてくる問題

腎蔵精・主生殖 (腎は精気を所蔵し、生殖を主とする)

女性は精気(女性ホルモンを分泌させるエネルギーの素のようなもの)が充分であれば、子宮の卵巣は滋養され、毎月きちんと生理がきます。また生理が来るということは、子供を産む働きが正常に働いている証。動物と同じように私たち人間も異性のパートナーを見つけなければいけないので、私たち女性は肌の色ツヤを良くしたり、体つきを引き締めたりして自分を魅力的に見せるための女性ホルモンの分泌をします。

つまり、精気が充分であれば、よほどの暴飲暴食でない限り体型は崩れることなく美しくしとやかでいられるのです。

反対に精気が足りなくなると、そもそもの生きる力が低下し、体内の五臓が力不足に。生理不順から始まり、一年も立たないうちに体型がぽっちゃりしたり、全体的にむくみをかんじたりするようになります。また肌に関しても、たるみやむくみが目立ちあんぱんのような顔になってしまうのです。(=中国語で「包包顔」と書き、パンパン顔と表されます)

《腎のエネルギー不足》妊娠力の低下について

「黄帝内経・上古天真論」曰く「女子七歳。腎気盛、歯更髪長;二七而天癸,任脈通,太沖脈盛・月事以時下,故有子。

意味としては、女の子は7歳の時から腎精が盛んになり、女性としての発育を始める。14歳で任脈が通じ、大衝脈が盛んとなるので、生理が始まる。=妊娠ができるようになる。中医学が考える腎の生殖機能には、子宮の働きや、妊娠するために行われる生理の働きが含まれているので腎の力が低下すれば、自然に妊娠力は低下し、月経困難や不妊症を招く恐れがあるのです。

《腎陰不足》歩き姿を醜くみせる腰痛問題

中医学では、腎は人間の生命の源そのものであると同時に、陰陽の源を蓄えている場所でもあります。そのため私たちの表情(顔)の色ツヤや体内の生命力のパワーが満ち溢れているかどうかは腎の力が不足したり、過剰になったりすることに関係しています。

例えば、腎陰が不足すると、腰痛や背中が張りやすくなり、手脚に疲れを感じ、力が入りにくくなってきます。また、心が落ち着かなかったり、寝汗をかいたり、時にはめまいや耳鳴り、記憶力の低下といった不調が現れやすくなります。

現代女性は「腎」の老けが早まりやすい!

現代女性は、ストレスが多いために、日常においてきちんと養生をしなければ、腎を傷つけ、腎の陰陽バランスを乱し、腎陰不足または腎陽不足を招いてしまいます。その結果、早いうちから老化が始まるだけでなく、上半身に不調が出やすくなります。一度陰陽のバランスを崩すと、病になりやすくなってしまいます。黄帝内経では腎は40歳を境に衰え始めると記載がありますが、体と頭を使いすぎたり、夜遅くまで起きていたり、完璧主義者だったりする方は、本来備わっている腎の気以上に、自分の体を酷使してしまう傾向があるので、少しでも思い当たる方は化粧品でのエイジングケアだけでなく腎の養生も心掛けてくださいね。

ABOUT ME
日中美容研究家 濱田 文恵
医薬品登録販売者 / 国際中医薬膳師 自身のニキビ肌をセルフ美容で克服した過去から、”キレイ” は自分自身で作れることを確信。2017年、一般社団法人日本セルフ美容協会を設立。毎日のセルフ美容に自身のルーツである東洋と西洋を組み合わせた独自の美養法を提唱する。 昨年末、初の著書『運命をこっそり変える』を出版。現在は美容家として、幅広く活動する。